”地元に貢献したい!”

「日常生活即剣道」。普段の生活がそのまま剣道の試合の結果にでる、と鹿屋体育大学の剣道部時代に指導教員だった故國分國友先生(範士八段)から教わった言葉をいつも大事にしてきたと言う。取材中、内倉康孝さんから幾度となく飛び出した「恩返しをしたい」という言葉から、鹿屋体育大学での4年間がいかに充実していたかが伝わってきた。「株式会社おおすみ観光未来会議」でのチーフディレクターとしての任務を終えて、この4月に派遣元の鹿屋市役所に戻った。地元を愛し、剣道を愛し、鹿屋体育大学の卒業生であることを誇りに、常にチャレンジ精神を忘れない。穏やかななかにもゆるぎない闘志をいつも胸に秘めている―そんな気がした。

鹿屋体育大学7197

うちくら・やすたか。1970(昭和45)年6月18日生まれ。鹿児島県鹿屋市出身。1993年3月、鹿屋体育大学体育学部武道課程卒業。同年4月、鹿屋市役所入庁。剣道教士七段。現在鹿屋市立田崎中学校剣道部外部指導者、田崎武道館代表、鹿屋市剣道連盟理事長、鹿児島県剣道連盟理事。主な競技歴は全九州学生剣道選手権大会優勝。全日本学生剣道東西対抗試合優秀選手。全日本学生地域対抗剣道大会優勝。

―剣道はいつから始めたのですか。

内倉 小学2年生です。私が生まれ育った鹿屋市の田崎地区は当時剣道が盛んで、小学校に入るとほとんどの子どもたちが剣道を習っていました。町内放送で団員募集が流れたのを聞いて、自分が剣道をする姿を思い浮かべて入団を決めたことを今でも鮮明に覚えています。

―鹿屋体育大学に進学したいと思ったのは?

内倉 小学校の高学年の時に鹿屋に国立で唯一の体育大学ができるという話を聞き、当時の剣道の道場の先生から「内倉は鹿屋体育大学に行くんだぞ」と刷り込まれました。家から通える大学で、剣道ができるっていいなあと思っていましたが、中学3年生の時に1期生で剣道部の濱田臣二先輩に家庭教師に来ていただき、さらに行きたいと思うようになりました。

―念願かなって進学できていかかでしたか。

内倉 今の私があるのは鹿屋体育大学に入ったことと、剣道をしたお陰だと思っています。剣道は上下関係が厳しい世界ですが、鹿屋体育大学は指導者を育成する大学ということで、「自分のことは自分でする」というのが基本でした。かといってみんなちゃんとわきまえていたので、とても良好な関係を築くことができました。剣道も学問も志を高く持てば持つほどやりがいのある大学だったと思います。

―学生時代の思い出は?

内倉 剣道部、特に同期の仲間と稽古に励み、遊んだ日々はかけがえのない時間でした。い自宅から通っていたので鹿児島弁のイントネーションが抜けず、部員を注意しているときもアクセントが変だと叱っているのに笑われたり、休み時間に鹿児島弁講座を開いていたので、同期に内倉のおかげでヒアリングはできるようになったと言われたこと。ほかにも田口信教先生に泳いでみせてとお願いして、「俺の泳ぎはひとかき50万だぞ」と言って泳いでくださり、「ほ~これがオリンピック金メダリストの泳ぎか」と思ったことや、楽しかった相撲の授業などいろんなことがありました。思い出は尽きません。

―鹿屋市役所に入ろうと思ったのは?

内倉 最初は教員志望でしたが、地元の大学に行かせてもらったので、地元に貢献したいという思いもあり鹿屋市役所を希望しました。また、両親が高齢で一人っ子だったこともあり、地元での就職を考えました。

―3月まで株式会社おおすみ観光未来会議に出向されていました。内倉さんが提案された鹿屋体育大学での真剣試し斬りを取り入れた「武道ツーリズム」が印象に残っています。

内倉 コロナの前はインバウンドが注目されていましたので、真剣試し斬りは外国人に剣道に興味をもっていただく最初の切り口としてインパクトがあると思って、剣道部の前阪茂樹先生に相談したところ、快く協力していただきました。鹿屋体育大学の剣道部は全国でも有名で、多くの一流選手を輩出しています。道場も立派で、ここでの体験は貴重で価値が高く、個人的にも「おおすみの武道ツーリズム」に非常に高い可能性を感じています。

―4月から鹿屋市役所に戻られました。今後の目標は?

内倉 これまでの経験や知識を生かして、鹿屋市民が安全で安心して楽しく暮らせるよう、市役所の先輩からいただいた「向き・不向きよりも前向き」の言葉で心機一転、また新たな気持ちで行政の仕事に取り組んでいきたいと思っています。剣道は途中10年ほど親の介護や娘のPTAの活動で離れておりました。7段に合格して10年経たないと8段の受験資格がないので、6年後に挑戦します。今後も仕事をしながらではありますが、青少年の剣道の指導と育成にも取り組んでいこうと思っています。今年は開学40周年を迎えます。今後も「体育大OB・剣道」をひとつのキーワードとして、地元の発展のために頑張ってまいります。

(取材・文/西みやび)

※所属およびインタビュー内容は、取材当時のものです。

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