日本で唯一の国立体育大学

国立大学法人 鹿屋体育大学 KANOYA

スポーツ・武道実践科学系 中谷 太希

鹿屋体育大学が開学し、学生を受け入れた1984年に創部した歴史を持つ体操競技部。本学に助教として着任した翌年の2022年から監督を務めるのが、OBでもある中谷太希先生だ。自身の入学時は弱かったという体操競技部を強くしたいという想いで、卒業後も特別支援学校の教員を務めながら外部コーチとして携わってきた。2021年の第75回全日本学生体操選手権大会では男子団体2位、社会人やオリンピアンも出場する2022年の第76回全日本体操団体選手権では1位徳洲会クラブ、2位セントラルスポーツに続く3位と、学生の団体としては1位に輝いた。今年卒業生から初の五輪代表選手が誕生、最終選考会となった5月のNHK杯では、決勝に残った21人中約3分の1の6人が本学の学生とOBが占めるなど、確実に着実に力をつけてきている。座右の銘は「できるかできないかではなく、やるかやらないか」。やさしい表情の奥に秘めた情熱はだれよりも熱く、ぶれない芯の強さを感じた。

中谷先生の研究内容をひとことで教えてください。

中谷 体操競技です。技の指導方法や練習方法、習得者がどうやって技を行っているのかを研究しています。

選手時代は、平行棒と鉄棒が得意種目だったと伺っております。体操競技はいつから?

中谷 幼稚園です。父も大学まで体操競技の選手をしていて、その後指導者になった影響もあり、兄弟3人とも体操を習っていました。小学校5年生までは宝塚の体操クラブに所属、小学校6年生からは尼崎の体操クラブに移りました。

なぜ、鹿屋体育大学へ?

中谷 国立だということが大きかったと思います。

実際に入ってきてどうでしたか?

中谷 私が入学する前の年に、体操競技部は1部から2部に落ちたんですね。それで、同期の小山仁寛、梶谷尚宏、早瀬悟志、谷徳樹、私の5人で体操競技部を変えていこうって誓いました。

尊敬する人は、前体操競技部監督の村田憲亮先生だそうですが。

中谷 村田先生は私が入学する前年に鹿屋体育大学に着任されましたので、大学4年間、大学院生時代、コーチになってからとずっと行動を共にさせていただき、退職されるまで実に多くのことを学ばせていただきました。

大学院に進学したのは?

中谷 オリンピックに出場して金メダルを獲得することを目標に頑張ってきましたので、どこまで上を目指せるのかもう少し知りたいという気持ちがありました。また、院に行くことで修士を取得できるので、両親を説得しました。競技は大学院2年生時の全日本シニア大会で引退しました。オリンピックなど日本を代表する選手にはなれませんでしたが、学生時代、全日本体操選手権大会では団体総合4位を経験し、国体にも4年連続で出場することができましたので、鹿屋に来て競技力はかなり上がったと思います。

現在、本学博士課程の2年生でもあります。

中谷 昨年地元テレビで大学教員、監督、大学院生、二児の父、もう一つは忘れましたが、二足の草鞋ならぬ、五足の草鞋と紹介していただきました(笑)。

卒業生でもある中谷先生から見た鹿屋の魅力は?

中谷 ごはんが美味しくて、住みやすいということですね。大学の魅力としては学業と課外活動に集中できるので、目標達成できる環境が整っていることだと思います。体操競技部の学生にとっては、授業の空き時間に自由に体操練習室を使えるというのも魅力的だと思います。総合大学だと学生数が多いので、器械運動のコマ数も必然的に多くなり、体操練習室を使える時間もかなり制限されますが、鹿屋の学生は夕方からの練習を充実させるためのトレーニングやリハビリなどの自主練習をしている学生が多いです。

「オーダーメイドの指導」を大切にしていらっしゃるそうですが。

中谷 本学に着任する前に2年間、特別支援学校の教員をしていました。「オーダーメイドの教育」とはその時の教頭先生がおっしゃっていた言葉であり、私の考え方を変えた言葉でもあります。大事なのは「個性を尊重して、一人ひとりに合った支援をすること」。これは、特別支援学校に限らず、人と接するときに必要なことだと気づかされました。体操競技でも、選手の数だけ個性があります。得意な種目、得意な技、性格、大事にしていることなどの個性をよく観察し、オーダーメイドの指導をこれからも心がけたいです。

監督としての今後の目標は?

中谷 これまでの最高成績は全日本インカレ2位、全日本体操団体選手権3位ですので、まずは全日本インカレでの団体総合優勝を目標に頑張ります。今年はインカレが8月23日から26日まで、鹿児島県で開催されます。杉野正尭選手が社会人になってからオリンピック選手に選ばれましたので、指導者として現役学生のうちにオリンピアンを輩出し、金メダルを獲得することをもう一つの目標に掲げたいと思います。また、学生によって目標は異なるので、全部員の目標達成にコミットしたいと思っています。

最後に本学に入学してくる学生にメッセージをお願いします。

中谷 自分の目標を持って入学してくる学生がほとんどだと思いますが、鹿屋体育大学には目標を達成させるための環境、支援体制は整っています。達成できるかどうかは本人次第ですが、夢や目標の実現を応援してくれる人を周りにつけられるかどうかはとても重要です。大学の仲間はもちろん、地域の方などさまざまな方々から応援支援を受けながら、目標達成に向けて邁進してほしいと思います。 

(取材・文/西 みやび)

※所属およびインタビュー内容は、取材当時のものです。