鹿屋体育大学特任研究員(URA)
竹尾 賢二さん

たけお・けんじ。昭和52(1977年)5月29日生まれ。大分県出身。1996年4月、大分県立別府青山高等学校(現別府翔青高等学校)から鹿屋体育大学に進学。2000年3月卒業。同年4月、東急スポーツオアシス入社。店舗勤務を経て、 販促マーケティング経営企画、広報等を担当する。2015年から2022年にかけて、さまざまなビジネスアプリを開発した。2022~2024年、三井住友海上火災保険株式会社ビジネスデザイン部。2023年4月〜 国立大学法人鹿屋体育大学 URA。2024年2月〜 株式会社ティップネス DX戦略部。2024年3月〜日テレホールディングス株式会社ウェルネス事業部。
今でこそスマートフォンやスマートウォッチを使いながらストレッチ、筋トレ、ジョギングなどを行うことは当たり前になっている。こうしたスポーツとDXを組み合わせてきた先駆者が鹿屋体育大学13期生にいる。竹尾賢二さんだ。お話を伺おうとオンラインインタビューをお願いすると、画面に現れた竹尾さんは人工呼吸器を装着していた。
2024年の7月にALSと診断された。氷の入ったバケツを有名人が頭からかぶるキャンペーンが世界中で展開され、それでALSを知った方も多いだろう。筋萎縮性側索硬化症と言われるこの病気は、10万人に一人の割合で発症する。筋肉を動かす運動神経細胞が徐々に減少して障害を受け、全身の筋肉が萎縮して力がなくなる進行性の神経変性疾患で難病に指定されている。いま竹尾さんは、上肢下肢が動かない状態になっているが、コミュニケーションはしっかりとれる状態で、ロボットスーツを用いたリハビリや、西洋東洋の医学を統合したケアを実践している。
現在も鹿屋体育大学の特任研究員(URA:リサーチ・アドミニストレーター)としてスポーツイノベーション推進機構で前田副学長のもと活動。研究者のテーマを外部課題に結び付けて橋渡しをするクロスアポイントメント的な仕事をしている。日本最大の国際スポーツ・健康産業専門展「SPORTEC」(スポルテック)では産学官連携推進×KANOYAモデルを掲げ、2023年から登壇し、2025年には電動車いすに乗りながら姿を見せている。
大学時代はサッカーを中心とした生活で、卒業論文は前田博子元教授のゼミに所属し、高齢者向けのフィットネスについて調査研究を行った。教員になることも視野に入れて免許も取得したが、一度はフィットネス業界で仕事をしてみたいと株式会社東急スポーツオアシスに入社。店舗勤務、マーケティング、経営管理などを経験し、経営企画から新規事業を手掛けるようになる。
ここからが竹尾さんの本領発揮で、健康×DXをキーワードに次々にアプリを開発していくこととなる。2017年には、約1,500種類以上の運動メニューが動画で配信され、自宅や職場などでスキマ時間にトレーニングやヨガ、ストレッチ、ライブレッスンなどを楽しめるオアシスのオリジナルアプリ「WEBGYM」がGoogle Play「ベスト オブ 2017」の〈アプリ〉隠れた名作部門に入賞。さらに2020年には、オアシスのフィットネスクラブで行われているスタジオレッスンをLIVE配信し、自宅にいながら運動を楽しむことができるオリジナルアプリ「WEBGYM LIVE」がGoogle Play ベストオブ2020のユーザー投票部門で選出されることになる。コロナ禍で健康不安を持つ人々の力強い味方となっていったことは想像に難くない。
その他、フィットネス業界初の取り組みとして、Appleが開発したプールで使用するスマートウォッチを、他社の独壇場だった領域に新たな水泳計測を取り入れて雑誌にも取り上げられた。さらにはラジオ体操を分解して15秒ほどの短尺バージョンをラジレッジと命名し、オフィスでも手軽にできる運動にして配信するなど数多くの開発を行った。
2022年からは新たな企業に移ってその力を発揮、進取の精神は益々冴えわたる。健康×DXによる新たな価値創造として「日常のあらゆる時間を健康時間に変える」ための開発を行ってきた。お風呂の中で、電車の中で、さらにはお寿司を食べながらなど人々の健康や身体運動に対する興味を刺激し続けている。
それにしても竹尾さんはなぜこのようにデジタル部門に強さを発揮できるのだろうか。かつてはノキアのシムカードを入れ替えて遊んでいたそうだが、それがここに結び付いたかどうかは定かではない。ただ、新しいものに対するアンテナの張り方は見事だ。さらにはインタビューで何度も口にした「ご縁があって」という言葉から、竹尾さんが人とつながるコミュニケーション能力にとても長けていることがわかる。前田副学長も「本当に信頼できる人物だ」と語る。人と人が結び付いて生まれてくる新たな発想、その成果物が竹尾さんの数々のアプリだったのだろう。
今、ALSを罹患しても社会の中で課題解決をしながら、しっかり生きていくためのプラットフォームづくりを始めている。一般社団法人を設立するためのクラウドファンディングも行った。竹尾さんが目指すのは「治療と仕事の両立」をさせながらの、国内初のリバース(寛解)だ。意欲は衰えることを知らない。