日本で唯一の国立体育大学

国立大学法人 鹿屋体育大学 KANOYA

神戸大学大学院 人間発達環境学研究科教授神戸大学大学院 マスターズ甲子園実行委員長

長ヶ原 誠さん

ちょうがはら・まこと。1965(昭和40)年4月、鹿児島県生まれ。鶴丸高校、鹿屋体育大学、同大学院体育学研究科修士課程を修了後、同大学助手に。1992年、カナダへ留学。1998年7月、アルバータ大学大学院体育・レクリエーション学博士課程を修了。同年9月から同大学非常勤講師。1999年、神戸大学発達科学部講師。准教授を経て、2014年から同大学大学院人間発達環境学研究科教授。

「マスターズ甲子園」の生みの親

有言実行。火を噴く桜島以上に熱い想いを胸に秘め、スポーツマンらしくさわやかで礼儀正しく、常に謙虚で穏やかな姿勢を崩さない。全国の高校野球OB・OGが、性別・世代・甲子園出場の有無・元プロアマを問わず、出身高校別に同窓会チームを結成し、甲子園出場を目指す「マスターズ甲子園」。その開催を通じた生涯スポーツ推進プロジェクト研究グループの代表として、1期生で神戸大学大学院教授の長ヶ原誠さんが今年第23回秩父宮記念スポーツ医・科学賞を受賞した。マスターズ甲子園は趣旨に賛同したシンガーソングライターの浜田省吾さんが大会テーマソングを提供し、重松清氏により小説化され、2015年には中井貴一さん主演で映画『アゲイン 28年目の甲子園』(東映)としても公開され、主題歌は浜田省吾さんが手掛けた。当時関係者が口にしたのは「長ヶ原さんの人柄に動かされて」。この言葉がすべてを物語っている。

まずは「第23回秩父宮記念スポーツ医・科学賞」の受賞、おめでとうございます。

長ヶ原 今回の受賞はマスターズ甲子園をただイベントとしてやっているのではなく、これまでかかわってきた神戸大学の大学院生やゼミ生たちが研究テーマとして取り組んできたことが、教育成果として評価されたことをとてもうれしく思いました。昨年の第22回は田畑泉立命館大学教授が率いる研究グループの一員として、同じ1期生で残念ながら先月亡くなった荻田太先生らの受賞でした。田畑先生は鹿屋体育大学で教えていらしたので、田畑先生・荻田先生から続く鹿屋チームのバトンをつなげられたことも幸甚に思います。

マスターズ甲子園の第1回大会は4県82校の参加だったそうですが、2019年の第16回大会では41都道府県677校の参加となるなど年々規模が拡大しています。

長ヶ原 高校時代に目指したあの舞台=甲子園を復活させることによって、人生の中にもう1回プレイボールがあってもいいのではと、野球部の部活動の同窓会で甲子園を目指すマスターズ甲子園。現役の高校生より先に先輩たちが甲子園に行くケースも出てきています。恐らく世界で1番大きな同窓会組織だと思いますが、あきらめの悪いおじさんたちがいかに多かったか、ということですね(笑)。

大学時代で印象に残っていることは?

長ヶ原 スポーツを学問的に研究できるということで進学しましたが、全国からすごいメンバーが集まっており、寮も授業も楽しくて毎日のように刺激のシャワーを浴びていました。当時は野球場もなく、いろんなところに練習に行っていたのでジプシー球団と呼ばれ、寮までの道は草ぼうぼうの獣道で、陸上競技場をつくるために冬にアルバイトで1期生のみんなで芝生を植えたことを覚えています。

初代の江橋愼四郎学長が「パイオニア精神」という言葉をよく使われていましたが、体育大なのに英語は必修で、国際シンポジウムに参加するたびにカルチャーショックを受け、留学して語学を身に付けたいという気持ちになりました。人生で壁にぶつかったとき、恐らく卒業生は鹿屋で一生懸命頑張った原点を思い出すと思います。今年40周年を迎えますが、常に進化してきていることを実感できるのは、大学を支えてくださっている教職員のみなさんや大学に残っている卒業生のお陰です。

カナダへ留学中だった1998年に400m陸上で参加された「ワールドマスターズゲームズ」。ご自身が役員を務めておられる「ワールドマスターズゲームズ2021関西」が、コロナによる1年延期で来年5月13日に開幕します。

長ヶ原 4年に1回開催されるワールドマスターズゲームズは、30歳以上であればだれでも複数種目にエントリーでき、だれもが主人公として参加できます。10回目の節目を迎えるアジアで初めての記念すべき大会ですので、ぜひとも卒業生が「NIFS」という名前で世界デビューし、体育大生の同窓会としてスポーツの楽しみ方を発信してもらえたらと思っています。

最後に夢を教えてください。

長ヶ原 マスターズ甲子園が50周年を迎える2054年に、88歳になります。米寿の現役プレイヤーとして出場できるよう、健康寿命を延ばしたいですね(笑)。

(取材・文/西 みやび)

※所属およびインタビュー内容は、取材当時のものです。