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国立大学法人 鹿屋体育大学 KANOYA

令和5年度鹿屋体育大学男女共同参画シンポジウム「スポーツで考える女性活躍促進」を開催しました!

2024/04/01

3月20日(水・祝)に鹿屋体育大学水野講堂大ホールで、令和5年度鹿屋体育大学男女共同参画シンポジウム『スポーツで考える女性活躍促進』が開催されました。第1部では1984年のロサンゼルスオリンピック女子マラソン日本代表で、1992年に引退するまでに日本最高記録12回、世界最高記録2回更新という記録を残し、現在はスポーツジャーナリストで大阪芸術大学教授の増田明美氏が「スポーツの力、女性の力」と題して講演を、第2部ではスポーツ文化ジャーナリストで本学経営協議会学外委員の宮嶋泰子氏にもご登壇いただき、「スポーツのまち かのや から女性活躍促進を考える」をテーマに、増田氏のほか本学の山田理恵スポーツ人文・応用社会科学系教授、男女共同参画室長が司会進行役で加わり、3人でディスカッションを繰り広げました。

はじめに金久博昭学長が「本日ご登壇いただく増田先生は女子マラソン・陸上競技長距離走の第一人者で、宮嶋先生はオリンピックで体操やマラソンの実況中継を女性のアナウンサーで初めて担当するなどお二人ともスポーツ、ジャーナリストとしての分野の女性の草分け的存在で、司会進行役の山田教授も体育・スポーツ史の専門家です。アンコンシャス・バイアスという言葉がありますが、これは無意識の偏見や思い込みから偏った見方をしてしまうことを意味します。我々はまだまだそこから抜け切れていない部分があるのではと感じます。きょうのシンポジウムを通して、ご自身の普段の生活の中でこの言葉の持つ意味をもう一度思い起こしていただければと思います。4月からスタートするNHK朝ドラは日本の女性で初の弁護士、のちに初の女性判事になった三淵嘉子さんの実話をもとにした『虎に翼』です。我々大学としてもスポーツにおける女性の力、参画をもっと考えていき、発信していけたらと考えています」と挨拶しました。

増田氏は登壇すると開口一番「やっと念願叶って鹿屋体育大学に来ることができました!」と話し、2017年ロンドン選手権女子5000m代表の本学卒業生・楠莉奈さん(旧姓:鍋島)や2004年アテネオリンピック女子800m自由形金メダリスト柴田亜衣さん、北九州マラソンの生みの親・山根英明さん、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会で会場統括責任者を務めた内藤拓也さんなど活躍している卒業生について触れ、「卒業生の雰囲気がいい」とたたえました。また、マラソンの解説の仕事で「サングラスを外すと美人」「ちゃんと彼氏がいる」などと発言して、今の時代に言ってはいけない言葉を発してしまった失敗談を披露し、「失敗からしか学べない」と時代に対応していくことの難しさをユーモアを交えながら教示しました。

オリンピックに新しい種目が採用されるときには都市型であること、男女平等であること、若者に支持されていることという3つの条件があり、男女混合型の種目も増えてきていることや、「女性のスポーツの歴史は、二階堂トクヨさんから始まった」「1921年に国際女子スポーツ連盟を組織し、近代オリンピックへの女性参入に尽力したフランス人のアリス・ミリアさん」「日本人女性初のオリンピックメダリスト人見絹枝さん」など、女性がスポーツ界で活躍できるための礎を築いた歴史上の人物にも触れ、「私たちはこれらの方々がつくってくれた道の続きを走っているんです。スポーツをやっている女性から元気をもらえると女性アスリートを応援してくれる人が増えていけば、幸せな世界、元気な社会になっていくんじゃないかなと思います。今は貧しい国だけど女性がスポーツを始めたからこの国に注目したいという国が世界にはけっこうあるんですよ」と国際NGOプラン・インターナショナルジャパンのボランティア活動でラオスやトーゴを訪れたときの写真を見せながら解説。また、かつては指導者といえば男性しかいなくて「生理があるようじゃ、練習が足りない」と言われ、28歳で現役引退したときには足に7か所の疲労骨折があった自身の経験を披露、マラソン女子パリ五輪内定の鈴木優花選手の指導者がバルセロナオリンピック女子マラソンに出場した山下佐知子さんであることに触れ、「女性の指導者が増えてくれば女性ならではのきめ細かい視点から、女性の選手をビッグにできる。そこに期待して、私も微力ながらこれからも頑張っていきたいと思います」と締めくくりました。

2部のディスカッションでは、ロサンゼルスオリンピックに向かうときに空港でバッタリ会ったのが最初の出会いという増田さんと宮嶋さんのお二人が、息もぴったりな展開を見せました。宮嶋さんは今年の第26回秩父宮記念スポーツ医・科学賞奨励賞の受賞者個人が能瀬さやかさん、団体は小笠原悦子さんが代表を務める順天堂大学女性スポーツ研究センターが受賞したことを紹介し「画期的なことであり、女性のスポーツが今注目されている証拠。これだけ女性アスリートの研究が進んでいるということは、それだけ女性がスポーツをすることが特殊なことではなくなってきた証拠」と話し、具体的に女性の割合を数値で示して目標に近づけていくことが大事だと力説しました。増田さんは千葉県の専業農家で育ち、両親の共同作業が当たり前の家庭環境で育ったことにも触れ、宮嶋さんが「結婚式のケーキ入刀後も家庭で一緒に何かをやる、一緒に汗をかくという当たり前のケースを子どもの頃から増やしていくことが性差による不利益を生まないためには大事」と話しました。

閉会に際し、本学の平川康弘理事・副学長が「男女共同参画女性活躍促進の観点から、本学では学生にもジェンダー論などの授業を開講しております。今後女性の教員の数を増やしたり、働きやすく子育てをしやすい職場づくりにも力を入れていきたいと思います」とご登壇いただいた先生方やご参加いただいた会場の皆様への謝辞を述べ、大きな拍手に包まれてシンポジウムはお開きとなりました。

開会の挨拶をする金久学長
第1部で講演する講師の増田氏
トーゴの写真について解説する増田氏
第2部のディスカッションの様子
会場のみなさんへのサービスで撮影タイム。
左から山田教授、増田氏、宮嶋氏
閉会の辞を述べる平川理事・副学長