故荻田太教授を偲び第5回日本体力医学会南九州地方大会が本学で開催されました
2023/02/20
令和5年2月11日(土)、「第5回日本体力医学会南九州地方大会」が本学で開催されました。はじめに大会長を務めた本学の堀内雅弘教授(スポーツ生命科学系)より、1949年に創設された日本体力医学会の歴史と役割、子どもの体力低下や肥満など現代の課題や現状、今後の方向性などについて問題提起がありました。また、一昨年8月15日に永眠した故荻田太教授を偲び、追悼シンポジウム講演という形で開催することになった趣旨について、生前秩父宮記念スポーツ医・科学賞「奨励賞」を受賞するなど幅広い研究分野で活躍されていた荻田先生の経歴の紹介、荻田先生と縁の深かった基調講演の2人の先生方の紹介がありました。
基調講演Ⅰでは「故荻田太先生を偲んで-発育期のスポーツと将来の健康-」と題し、本学元教授でもある安部孝先生(順天堂大学スポーツ健康医学科客員教授)が講演しました。演題が記された最初のスライドには、背景に荻田先生が眠る墓地の入り口から桜島を望む鹿児島市内の風景の写真が使われており、感慨深いオープニングになりました。
安部先生と荻田先生の最初の出会いは1989年に開催されたトレーニング科学研究会(現・日本トレーニング科学会)の第1回大会で、以降、荻田先生に学術英文誌『Journal of Trainology』のAssociate Editorを務めてもらうなど、安部先生が日本トレーニング科学会の会長を2007年から3期9年間務めた間に親睦が深まっていった話や、安部先生のアメリカ滞在中に、14時間の時差があるはずなのに送ったメールにすぐに返信がきて驚いた、といった荻田先生らしいエピソードも披露されました。「なんでそんな時間に起きているの?」と尋ねると、荻田先生から「自分の好きなことができる時間はその時間しかない」という答えが返ってきたそうです。また、安部先生の専門分野である、中高齢者の健康を予測する体力指標である「握力」について、発育期に実施するスポーツ活動が握力に与える効果やその重要性など、多くの研究成果を披露しました。
基調講演Ⅱでは「故荻田先生を偲んで-荻田先生と取り組んだ特殊環境下でのトレーニング実験-」と題し、2006年3月に本学を3年次早期卒業して修士課程に進み、2011年に本学博士後期課程を修了した西脇雅人先生(大阪工業大学工学部准教授)が講演しました。
西脇先生は学部、修士、博士と荻田ゼミ(運動生理学研究室)所属で、当時最新鋭と言われていた流水プールと低圧チャンバーを使って荻田先生と共に研究してきた内容や、低酸素と水中環境といった特殊環境を用いた一般者に対する健康増進プログラムの開発・確立を目指した研究を展開してきたこと、メタボリックシンドローム予防改善のために低酸素運動プログラムの構築をしてきたこと、タバタ式トレーニングを考案した田畑泉先生のTabata Protocol同様、Ogita Protocolも存在することなど、荻田ゼミOBならではの観点から話しました。
また、ケガをして陸上競技から水泳に転向し、その後全日本学生選手権にまで出場した荻田先生が、コースロープの上を歩けると思っていたことや、日本語に強いこだわりを持っていた荻田先生にメールを送るたびに言葉遣いを厳しくご指導いただいたこと、「研究費を無駄にするな!あきらめるな。研究費は税金だぞ!実験を止めるな!」が口癖だったこと、鹿屋体育大学1期生としての母校愛と責任感が強かったことなど、志半ばで旅立った厳しくもやさしかった恩師への感謝の気持ちを時に笑いを取るエピソードも交えながら披露しました。
進行は與谷謙吾准教授(スポーツ生命科学系)、クロージングは田巻弘之教授(同)が務めました。荻田先生も今大会の開催を、天国から温かく見守ってくださっていたことでしょう。


