日本で唯一の国立体育大学

国立大学法人 鹿屋体育大学 KANOYA

第35回九州レジャー・レクリエーション学会鹿屋大会が本学で開催されました

2023/02/14

令和5年2月11日、12日の2日間、本学において「第35回九州レジャー・レクリエーション学会鹿屋大会」が“人口減少地域におけるレジャー・レクリエーションの可能性”をテーマに久しぶりに対面で開催されました。

11日(土)は理事会の後に基調講演が行われ、司会を務めたうきは市社会福祉協議会の國武竜一氏から「鹿屋市開催で、今回のテーマならこの方しかいないと思って依頼した」との紹介を受け、鹿屋市串良町における地域再生&創成で有名な「やねだん」の自治会館館長豊重哲郎氏が登壇しました。演題は「住民による、住民のための地域再生-鹿屋市『やねだん』の取り組みから-」。豊重氏は平成8年から26年間かけ、行政に頼らない地域再生・創成のためのさまざまな仕掛け、取り組みを創りつづけた自らの体験から、「人口減少の時代に若い人たちがふるさとを愛し、地元に帰ってきて子育てをしたいと思えるような地域にするための人づくりのヒントや課題」について丁寧に話しました。サスティナブルな地域を育てるのは、一人ひとりへの目配り・気配り・心配り、そして「言葉配り」が大切であり、それをリーダーが黒子で実行すること、また「地域再生に補欠はいない」、「人を引き出すための人つくり」や「“EDUCE”がポリシーだ」等々、実績と経験から紡ぎだされた講演内容には、地域活性化に限らず、組織や団体等を再生・創成させるためのヒントが盛りだくさんでした。

2日目の12日(日)の午前中は2つのセッションに分かれ、研究発表2題と実践発表3題が行われました。第1セッションの座長は竹森裕高先生(西九州短期大学)でした。研究発表1では堤公一先生(佐賀大学)が「レクリエーションと体育の近接性について-専攻研究論文の分析からの考察-」と題して発表、先行研究論文において「レクリエーション」と「体育学習」の関係がどのように語られてきたかを基に、これからの体育学習のあり方についての考察をしました。

研究発表2では谷口勇一先生(大分大学)が「『ゆるスポ部活』は女子高校生のスポーツ離れを抑止できる-女子学生に対する振返り調査結果をともに-」と題して発表しました。高校時代運動部に所属していなかった女子学生を対象に実施したアンケートで、「ゆるスポ部活」があったとしたら入部していたかもしれないと94.3%が回答したという具体的数字も示されました。

第2セッションは座長を山本浩二先生(北九州市立大学)が務め、実践発表1「中学校におけるレクリエーション活動の取組 レクリエーションで心も体も元気塾」を天保山中学校の大平公明先生、実践発表2「スポーツの機会創出に関して」の事例報告を北濱幹士先生(東海大学)、実践発表3「被災地に残る廃校の利活用について『旧:松末小学校』と『旧:久喜宮小学校』に焦点をあてて」を村江史年先生(北九州市立大学)が発表しました。天保山中学校の取り組みでは不登校傾向の生徒が保健室登校で教室には入れなかったものの、このレクリエーションにだけは全て参加したことも紹介されました。

13時からは「地域資源の廃校を生かすレジャー・レクリエーション」をテーマにシンポジウムが開催され、総合司会を本学の前田博子教授(スポーツ人文・応用社会科学系)、コーディネーターを坂口俊哉講師(同)が務め、大久保憲治氏(鹿屋市役所)、繁昌孝充氏(ユクサおおすみ海の学校)、洲鎌宏章氏(パーク高須中)の3人がパネリストとして登壇しました。はじめに坂口講師からシンポジウムのテーマについて、「人口減少地域の活性化は地方都市の共通課題であること」、「少子化、高齢化、過疎化地域の振興・活性化に対して、レジャー・レクリエーションはどのような役割を果たせるのか?」、「鹿屋市で進行中の廃校利用に着目して、レジャー・レクリエーションが果たしている役割は?」など、趣旨の確認と問題提起がありました。パネリストの大久保氏からは「廃校利用の現状と課題 鹿屋市の取り組み」、繁昌氏から「菅原小学校の利活用事例 宿泊施設として」、洲鎌氏からは「高須中学校の利活用事例 スケートボードパークとして」の演題でそれぞれ発表がありました。

ディスカッションの後、坂口講師がレジャレクは直接的に少子化を食い止めることはできないが、間接的には社会問題の解決につながる可能性があること、働き方改革の1つとして地方への移住が報道されているが、たとえばサーフィンをしたいから宮崎に移住したい、など人生の目的としての中心的な価値の中にレジャレクが入ってきていることなどについて触れました。また、廃校を利活用することで子どもがいなくなった場所に再び人が戻ってきて人の声が聞こえるようになったことを地域の方々も喜んでいるという事例が示されたことを踏まえ、「学校は廃校になっても地域の人々をつなぐ『ボンド』の役割や多世代交流の場としての役割、防災拠点としての役割を果たせること、ただしそこには財政の問題があり、行政の協力が必要である」とまとめました。

最後に今大会実行委員長を務めた前田教授から「今回の学会ではみなさんにとても丁寧に説明していただき、議論を深めることができました。レジャー・レクリエーションにおける自分たちの課題として、今後我々としても醸成させていきたいテーマをいただいたと思います」と謝辞があり、2日間に渡った学会は無事に閉会となりました。参加者全員が、人生の目的としてのレジャーの可能性について考える有意義な機会となりました。

実行委員会委員長を務めた前田教授
基調講演するやねだんの豊重氏
2日目午後のシンポジウム